明専トランプのルール

黒木&軽部 1998/07初版, 2002/06改定 (See English Version, 特集明専トランプ)
  1. はじめに
    明専トランプ,略して明トラは,切札(トランプ)ゲームの一種であり, 1907年大橋栄三教授が明専(九州工大の前身)の 開校に先だって英国留学をした際の船中で習得した トランプゲーム 500 を起源としており(文献 [1], [2], [3]参照),正に 本学と共に生まれ育ったゲームである.今は明専寮がその継承の主体となっているが, 各種のスポーツクラブ,文化クラブ,研究室などでも行われている. また卒業生が会社で流行らせているという話しも聞く. なおゲーム 500 は1904年に米国の US Playing Card Company という会社がルールの著作権を得ており,現在ではオーストラリアの National card gameとなっており,北米でも人気がある. また現在日本でも人気のある コントラクトブリッジが1920年代に発明された ことを考えると明トラの歴史の古さがうかがえる.
  2. プレーヤとカード
    ゲームは2人や3人で行う場合もあるが,通常は4人で行うので, 以下では4人明トラについて説明する.正式試合では審判が付く. プレーヤ4人は2チーム(2人対2人)に分かれ, (座布団などの)4辺形の各辺に 味方を対面(トイメン)にして座る.使用カードは,4種類のスーツ ()の A, K, Q, J, 10, 9, 8, 7, 6, 5の4×10枚とジョーカ 1枚を加えた計41枚である. 残りの2, 3, 4は点数を記録するのに用いる. なお以下では昭和50年以降(表2参照)の専門用語を 使って説明する.例えばスーツの呼び名は, :ヘル,:ダイヤ,:クラブ, :ズッペ,ジョーカ:タンツェンを使う.
  3. ゲームの手順
    (1)配る, (2)吹く(オークションを行う), (3)プレイするという 3つの手順を1回行うごとにどちらかのチームに点が入る.回を重ねて合計が 17点以上に先に到達したチームが勝ちとなる.
    (1)配る
    • 各人にカードを10枚ずつ伏せて配り,残りの1枚を場の中央にアガ リとして伏せる.各人は配られた10枚を手札とし, 手札は他の人に見られないようにする.
    • カードを配るのは初回は誰でもよい(正式試合では審判). 2回目以降は前回に負けた(得点しなかった)ペア(の一人) である.ただし,全員パスおよび ブロークンの場合の例外がある.
    (2)吹く
    • 初回はジャンケンして,勝った人を吹き上げとする. これにより吹き上げの右に座っている人がこの回の吹き始めになる. 2回目以降の吹き始めは前回の吹き始めの右に位置する人になる. ただし,ブロークンの場合の例外がある.
    • 吹き始めから反時計回りに一巡して吹き上げまで, この回での希望の切札と取れそうなカードの組 の数を吹く(宣言する). このとき, 次に吹く人は前の人よりも強く吹くか,パス(吹く権利の放棄) しなければならない. ただし宣言の強さは,切札については,トラ,ヘル,ダイヤ, クラブ,ズッペの順(表1参照), 数については大きい順(6以上)である. (宣言の例:ズッペ6,トラ10(トラスラミ)など.)
      表1:切札宣言の種類と宣言が採用された場合のカードの強さ. 最左欄の数字は宣言の強さ.
      切札カードの強さ
      1トラ タンツェンが最も強く,続いて 台札のスーツのA, K, Q, J, 10, 9, 8, 7, 6, 5の順.キリはない.
      2ヘル( ) 宣言したスーツはキリとなる. キリは強い順に,タンツェン,正ジャック(宣言したスーツのJ), 副ジャック(裏ジャックとも言う,正ジャックと同色のJ; はそれぞれ同色), A, K, Q, 10, 9, 8, 7, 6, 5の12枚になる. キリは他のスーツより強く,キリ以外のスーツの強さはトラ の場合と同じ. 但し副ジャックはキリであり元のスーツには属さない.
      3ダイヤ()
      4クラブ()
      5ズッペ()
    • すべての人がパスするとこの回は流れ次の回に移る.この場合次に配る人は最 後にパスした人であり,吹き始めは右の人に移動する. (ローカルルール:自然科学部ではタンツェンを持っている人が シャッフルしていました。)
    • 手札の中に絵札(A,K,Q,J)がまったく無いかまたはQ一枚だけの時(タンツェ ンはあってもよい)はブロークンと宣言して手札を公開し,この回をやり直 しにすることができる. この場合次に配る人はブロークンした人であり,吹き始めは移動しない.
    • 手札の中に4枚のJがあるとき,フォージャック(あるいはブローク ン)と宣言して手札を公開し,この回をやり直さなければならない. この場合次に配る人はブロークンした相手チームであり,吹き始めは移動し ない. (ローカルルール:配る人をブロークンした人の右隣の人とするルー ルもある.)
    (3)プレイ
    • 上の一巡の宣言で最も強く吹かれた宣言の切札が以下のプレイ で採用される. 吹き勝った(最も強く吹いた)人はアガリ(中央に伏せてある カード)を取り,不必要と思う一枚(ネグリ)を自分の前横に 伏せて置く. このネグリは以下のゲーム進行ですべての人の手札がなくなる までこの人以外は見てはいけない.なおアガリを含めてフォー ジャックとなったときはブロークンしなければならない.
    • 次に反時計回りに各プレーヤが手札から1枚ずつを表にして出し, 中央に4枚一組を揃える. 以下では,この4枚一組を出す一連のプレイを場と呼び, 場の最初の一枚を 台札, 台札を出す人を親と言うことにする. 場は配られた10枚の手札がなくなるまで,すなわち合計10回 行われる.
    • 最初の場は吹き勝った人が親になる. ひとつの場においては台札と同じスーツの手札があるときはその うちのどれか,なければ別のスーツのカードを出す. ただしタンツェンは台札がキリでないときでも出してよい. 逆に台札がキリのとき, タンツェンのみしかキリを持たない人はタンツェンを出さないと いけない.
    • 台札がタンツェンのときスーツ(キリ,ヘル,ダイヤ,ク ラブ,ズッペあるいは何でも良い)を請求できる.請求無しに場が進 行した場合,順番が回ってきたプレーヤは請求内容を場の親 に質問してよい.それに対して親は請求を明らかにしなけれ ばならないが,その場合その請求に反するカードを出していた人 はチョンボ(後述)となる.
    • 一巡してカード4枚が揃ったらその中で一番強いカードを出した 人は,この4枚1組を取り自分の前に伏せて置くとともに,次の 場の親になる.なお伏せたカードは,以後,自分および 味方だけが見ることができる.
    • 以上の場を手札がなくなるまで繰り返す. なおタンツェンは手札が残り1枚になる前までに使用しな ければいけない(手札が2枚のとき行う場をタンツェン場ともい う).また残りの組をすべて自分で取れる場合,順番が来た時点 でオープンと宣言して手札を公開してもよい.このとき手札を出す 順番によって取れない可能性があるならば,相手に指摘される前 に正しく示さないとチョンボとなる.
    • 手札が無くなったら次の規則で点数を付ける: 吹いた数をX,吹いたチームが取ったカードの組数をYとすると,
      • 吹いた数以上入ったとき, X-5+0.5(Y-X) 点を吹いたチームに得点する.
      • 吹いた数だけ入らなかった(落ちた;ロスした)とき, X-Y点を相手チームに得点する.
  4. チョンボ(相手チームに5点を与える規則違反)
    以下の規則違反を行いかつ相手に指摘された場合は,相手に 5点を与えてその回を終了する.ただし次の回の配りが始まるまでに指摘 されなければ時効になる.
  5. 点数の記録方法
    各チームはそれぞれ赤()または黒 ()の2,3,4のカードを用いて点数を記録する. 表あるいは裏にして何枚か 出すことにより点数を表し,表の場合はカードが示す数, 裏の場合は0.5がそのカードの点になる.各チームが出しているカードの点の 総和が各チームの点数になる.10点を越えると10点を引いた数をカードで表し,10点は 各自が記憶しておく.
  6. 用語と語源
    表2:明トラの用語と語源
    項目用語:語源
    昭和20前後 昭和50以降
    ハート: heart(英) ヘル: Herz(独)
    スペード: spade(英) ズッペ:?(不明) Schippe(独)?
    ジョーカ(joker) ジョーカ,オドリ,またはタンツェン: joker(英),踊り(日),または tanzen(独).ジョーカはピエロの絵が多く, それを踊らせる(出す)ということから. タンツェン: tanzen(独)、タンツェ:タンツェンがなまったもの?(昭和55年にはタンツェはなかった)
    A エース,またはポン: ace(英),ポンはpointを意味するスペイン(西欧)語? ポン:(左参照)
    K キング: king(英) ゴング: ?(不明)
    切札のJ 正Jまたは正 同左
    切札と同色のJ 副Jまたは副 同左
    低い数字(普通1〜10)のカード ローカードまたはロー: low(英) ,使用例:ローにはロー(台札が ローカードなら次の人はローカードを出す戦略)
    キリなしの吹き ノートラ: no trump(英) トラ: no trump(英)の略.
    伏せて配られた中央の一枚 アガリ:上がり(日).これを取りアゲて,プレイに移るから? 使用例:「アガリタ ンツェンを期待する」
    切札を宣言すること フク:吹く(日).値段などを吹きかける. 同左
    切札宣言の最初(の人) フキハジメ:吹き始め(日). 使用例:「フキハジメは誰?」
    切札宣言の最後(の人) フキアゲまたはアゲ:吹き上げ(日).フキの終り(上げ). 使用例:「今度は僕がフキアゲだ」,「次のアゲはサイド(横の人)だ」
    ジョーカ(joker)を出すこと 踊る: tanzen(独),ジョーカはピエロの絵が多く, それを踊らせる(出す)ということから. 同左(使用例:あそこで踊るべきだったね)
    台札が切札でないとき切札を出すこと 切るまたはカットする:cut(英)
    他の人が出した切札より,大きい切札を出すこと オーバーカットする:over cut(英)
    切ることができるのに切札を出さないこと ネグル スルーする:through(英)
    切札が全部出ていないとき, 台札として切札を出すこと 切り追いする
    その回のすべてのカードの組(10組)を取ること スラミ:slam(英) スラミまたはズラ:ズラはスラミ(左参照)の簡略形.使用例:「8 ズラ4点」
    手札が悪(良)過ぎる場合その回を始めからやり直す宣言 ブロークン: broken(英).壊れた手札. 同左
    不用と思うカードを出すこと ネグル: neglect(英). 無視する.捨てる. 使用例:それをネグッタら駄目だよ.
    不用と思って出すカード ネグリ: neglect(英)の日本語による名詞形. 特に,アガリを取った代わりとして前に伏せなければいけないカード を指して言うことが多い. 使用例:観客席から「今のネグリは失敗だよ」,
    吹いた数のカードの組が取れないこと 落ちる,またはロスする:落ちる(日),loss(英)する. (使用例:5(ファイブ)ロスはチョンボと同じ)
    吹いた数のカードの組が取れること 入る:入る(日).(使用例:ここでキリ追いしないと入らないよ)
    吹いた数の組だけが丁度取れること ジャストイン,ジャッチン:just in(英語)がなまってジャッチン. (使用例:7ジャッチンは2点)
    ジャンケンポン,あいこでしょ,…(ジャンケンの仕方) ジャンケンシュッシュッ,シュ,…:?
    キリ以外のスーツの札 バイプロ: ? バイプロ,バイブロまたはバイブル:バイブロとバイブルはバイプロ (byproduct(英)の略?)の聞き違い?(使用例:切りは全部出たのでバ イプロ勝負,バイプロがいいときは多く吹いてもよい.)
    相手に5点が入る規則違反 --- この規則自体がなかった --- チョンボ:マージャン用語のチョンボ(日).元々は錯和:ツァホ→ チョンボ(中)から.
    味方の出したカードから相手が何を出して欲しいのかを読みとること アサンプション: assumption(英) --- 特別な用語はない ---
    味方の出したカードの意味 サイン: sign(英) --- 特別な用語はない ---
    味方 ? 対面(トイメン):麻雀用語?

  7. 明専トランプについて言及している文献(6,7,8は公的に図書館からは入手 できないと思うので個々に入手のこと)
    [1] 作道好男,江藤武人編「なかばる原頭若 草の---九州工業大学60年史」,財界評論新社,pp.140-141,1970年
    [2] 関寅太郎「人間模様」,明専会有志一同, pp.297-299,1980年
    [3] 野上暁一編「明治専門学校40年の軌跡」, 明専史刊行会,p173([2]からの抜粋),1994年
    [4]「秘伝明専トランプ」, 黎明:九州工業大学第31回寮祭冊子,pp.44-55, 1991年
    [5]大高・正子・太田「寮歌・応援歌集」,1976年
    [6]明トラの歴史を守る会「明トラ-その大いなる野望」,九州工業 大学S2寮?,19??(>1980)年
    [7]九州工業大学自然科学部「明トラ公式マニュアル Ver1.3」,九州工業大学自然科学部,19??年
    [8]大山(明トラ普及推進委員会篇)「実践明トラ入門 VER2.2」,九州工業 大学制御教室大山,19??年
    [9]「特集 明専トランプ」, 明専会報 755号,明専会,1999年 (明トラの歴史、ルール(日,英),戦略,経験談などを含む)
    Last modified: Mon Nov 29 17:35:03 JST 2010